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「兄さん、これ見て。」
とある村で昼食を取っていたエドワードの向かいには、先程新聞売りの少年から購入したそれを読んでいるアルフォンスがいる。
熱心に記事を追っていたアルフォンスが、何か楽しげにその記事をエドワードの前へと差し出した。
「大佐だよ!凄いねー!!『事件早期解決!!』だって。」
「んー?」
フォークの動きを止め、口に物を含んだままエドワードは新聞を手に取る。
そこには遠巻きながらも東方司令部メンバーの姿を捉えた写真が付随されていた。
小さな人物描写ではあるが、久し振りに見るその男の顔は、何時ものにやけた顔とは違い鋭い眼差しの若き司令官が写されている。エドワードは何も言わず暫らくその写真を見詰め、肩を竦めると手荒にアルフォンスへとその新聞をつき返した。
「相変わらずど派手な事で、これで『焔の錬金術師殿』のFanも大勢増えるだろーな。」
「兄さん……素直じゃないんだから。」
「あ~ん?何か言ったか、弟??」
「……何にも言っていないよ。」
不機嫌に眉を潜め、再び食事へと意識を向けるエドワードに、アルフォンスは小さく肩を落とした。
兄、エドワードは、大佐との関係をアルフォンスに隠している様だった。しかし、聡いアルフォンスに取ってはエドワードの判りやすい行動はそれを確信させるもので、今更隠す素振りをされてもと内心考えている。
だからと言って、「わーい!大佐!!」なんてキャラが違う事をされてもどう反応すれば良いのか判らない。ただ、素直に大佐の顔を見て心を落ち着かせてくれればと願ってしまうのだ。
「兄さん、今度何時イーストに入るの?僕、皆に会いたいなぁ。」
「ん?」
「写真見たら皆と会いたくなっちゃった。」
――― 兄さんも大佐に会いたいでしょ?
この言葉はアルフォンスの心の中に封じられる。
そんな事を口に出したら、意固地なまでの態度で決してイーストに近寄らないだろう兄を思っての行動。
無邪気なまでのアルフォンスの言葉をエドワードはどう捕らえたのか、咀嚼が終わるとアルフォンスに優しい眼差しを向け
「手掛かりも尽きたしな……一度報告書出しに行くか。」
と笑ってアルフォンスに言った。
写真よりも―――――― その温かさに触れたいから。