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毎年催される盛大な先代の墓参り。
幼い頃亡くした両親の跡を継ぎ、世界経済の6%を占める経営力を持った【ロロノア・グループ】総裁の座に収まり早5年以上の月日が流れる。
死んだ者へと送られた仰々しい程のクロスの墓に部下が用意した花束を置く。
忙しくその顔すらも写真を見て思い出す両親にゾロは祈りを捧げ、その後式は恙無く進み後は集まってくれた多くの関係者へ挨拶を残すのみとなっていた。
墓を背に皆へと顔を向ける。
自分を品定めする視線をものともせず、普段は無口なその唇を開いた。
「本日はお忙しい中、先代の周忌にお集まり頂き感謝の念が尽きません。さて---」
その時微かにだが聞こえた……
音
参列者もその音を耳にしたのか、一瞬ざわめくと直ぐに静まりその音に耳を貸す。
ヴァイオリン?
音の方向に視線を向ければ、丘の斜面に在る墓へ向かい痩身の男がそれを奏でている。
【ショパン 練習曲作品10の第3番 ホ長調】
「別れの曲」と言われる耳馴染みのその曲を、ヴァイオリンの切ない音色が墓地の空気を染上げる。
新緑を撫でる優しい風
揺れる金の髪
……ゾロの心が俄かに騒ぎ出した。
脱稿(2006/05/31)
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