[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
お題提供
Imaginary Heaven様 (現在LINK先閉鎖?)
管理人:遙様
ジャンル:お題配布サイト
隣りに立つアイツは俺なんかよりずっと背が高い………
正直……認めたくは無いけど。
街中を大佐と歩くのは久し振りだった。
勿論俺の後ろからは、中尉とアルが一緒に歩いて来る訳で、二人きりと言う事じゃない。その方が俺も気楽だし話しもしやすい。今だに俺は大佐と二人きりになるのが苦手だった。
中尉の提案で昼食を一緒に取る事になった。入り慣れない高級なその店は、何処か落ち付かなくて俺はお腹が空いているにも拘らず、その場に腰が落ち付かなかった。案内された席に座り大佐がチョイスした食事を啄ばむ。目の前の大佐とその横に座る中尉。俺の隣りにはアルと変わらないメンバーなのに何処か緊張して食事の味なんて解からなかった。
見慣れない料理を眺めながらそれでも口に運んでいれば、何と無く大佐が気になった。食器から視線を上げれば、軽食を食べ終わった大佐は珈琲を飲んでいた。
何気に見ただけなのに……その珈琲を飲む口元から視線が外せなくなった。
考えてみれば俺から大佐にKissした事は無かった。俺からするのも恥ずかしいし…変だ!大体、そう考える前にアイツが勝手に俺の隙をついて遣りたい放題好き勝手にしている。こっちからなんて考える暇すらない。
そして、何よりここが重要!
俺と大佐が立っていれば、少しくらい背伸びをしても駄目なんだ。………届かないんだ。アイツに。
だからしない!俺からは絶対しない!!
俺の背がグーんと伸びて大佐を抜かしてマッチョになって……そしたら考えてやってもイイ。
「――― の?鋼の?どうした、何か有ったのか?」
「へ?」
間の抜けた返事を返した俺を大佐もそうだけどアルも中尉も不思議そうに眺めている。
まさか「大佐の……アレに目を奪われていて……な事考えてました。」なんて絶対言えない!
考えてもみれば、皆の前で疚しい想像して俺って壊れてしまったのかも知れ無い。
勝手に顔が熱くなる。そんな俺を皆はどう見ているのかまた考えてしまい、自分では止められない程顔が熱く感じた。
「俺チョット席外す!ゴメン!!」
俺は席を立ちトイレへと駆け込んだ。
鏡の前で自分の顔を見れば見た事も無い程の赤い顔が……!
「俺ってすっげーはすかしい奴!」
まるで欲求不満の様に大佐の事とを見詰めていた俺自身に自己嫌悪した時だった。
お題提供
Imaginary Heaven様(現在LINK先閉鎖)
管理人:遙様
ジャンル:お題配布サイト
初めてのKissは………
東の島国から『友好の印』と送られて来たサクラと言う名の木は、ピンクの小さな花弁が整然と咲き圧倒的に綺麗だった。
その下で立つ蒼の軍服と黒髪は、俺の目から見ても綺麗とかカッコイイとかそんな感情を抱いてしまう。だから流された………。
幻想的なその風景に目を奪われ、その言葉に耳を奪われ、その存在に魂を奪われた。
返事をする前に近付いて来るそいつの顔は、闇の瞳で俺を捉え思考までも奪って行った。目線を逸らさずその瞳を見詰めれば、唇が触れ合う瞬間にフワリと笑い俺にこう言った。
「Kissする時は目を閉じるものだよ。鋼の。」
その言葉に思考を取り戻し、弾かれたように身体を大佐から離した。だけど、背中に回った大佐の腕に阻まれ身体を離すことが出来ない。せめてとばかり顔を背け俯き舞い降りた花弁の絨毯を視界に入れた。
「……いきなり過ぎてる大佐が悪い。」
「それは失礼。」
「手が早いんだよ、俺の返事はどうした。返事も聞かず重要な事するんじゃねーよ!」
「『重要』ね。フム……鋼のはKissするのは初めてなのか?」
「はぁ?乙女ぶってる事聞くな!そんな事どーでも良いだろう!!」
腕で大佐の身体を突っぱねその場から離れ様としたけど、逆にその身体を強く抱かれ耳元で囁かれた。
「私が初めての人なら大変嬉しいじゃないか。」
「――― !!!」
顔に血が集まる程の恥ずかしさだった。
ジタバタとその腕の中で暴れてはみたが、体格差でその行動は呆気なく阻止されて逆に俺の瞳を捉える為片方の手で顎を固定された。
「どうなんだい、私が初めてかな?」
「悪徳業者みたいな顔してにやけるなっ!」
「では、その件は後ほどゆっくり聞くとしよう。」
顎を固定していた大佐の手は、するりと俺の後頭部に移動してその動きを止めた。
「さあ、瞼を閉じて。Kissしよう。」
「まだアンタに返事してねーじゃん!」
「聞くまでも無いよ。」
「自信満々……自惚れが強すぎんじゃねーの?」
「誉めてくれているのかな?さあ黙って。」
また近付いて来る黒の瞳を何時までも見て居たくて……羞恥心で逸らしたくて……。
俺は、触れる瞬間瞳を閉じた。
余りにも『高い空』だったから……。
余りにも『蒼』が綺麗だったから……。
俺は…、司令部の屋上で気分転換にと引っくり返って空を眺めて居たら、『今なら空だって飛べる』気分になって来た。
現実問題『無理』に決まっているけど、そんな気分にさせる空。
俺は起き上がり、司令部の屋上の淵ギリギリまで歩いた。下は目も眩むような高さだが、落下する事など微塵も思い浮かばない。
――― 飛べたら何処へ行こう?
――― 太陽に受け入れてもらえるかな?
――― アルを置いて行っちゃうな。
――― 落ちたら……アイツは何て言うだろう?1週間前みたいに『馬鹿を馬鹿と言って悪いか!だから『鋼の』は子供だと言っている!! 』って言うのか?
どうせ…俺は、子供だ。我が侭で、かわいげの無い……あんたには不釣合いな子供だ。
強い風が俺の背後から後押ししてくれる。
早く飛べ!
遠くに飛べ!
と……。
翼の変わりに両腕を広げる……目を瞑り……足に力を入れる。
『Take off』
……俺の身体は、飛び立つ事無く強い力で引き戻され屋上の床に転がった。
「エドワード!何を考えている!! 死ぬ気かっ。」
目を開ければ蒼い空を背負った大佐の顔が飛び込んでくる。怒り…悲しみ…寂しさ…入り混じった顔だった。
「マジ…今なら飛べる様な気がしたんだ。」
「人間が飛べる訳無いだろう!」
大佐が俺に覆い被さりゆっくり力を込めて抱き締めてきた。
「……すまなかった。言い過ぎた。……だから、許して欲しい。私の前から消えないでくれ。」
「だから……飛べる気がしただけで……死ぬ気なんて無いんだよ。」
「すまなかった……本当に……すまなかった。」
壊れた蓄音機の様に同じ音を出す大佐に抱き締められ……俺達の喧嘩は終わった。
小さな身体を背中から抱きしめ膝の上に乗せたロイは、金糸の前髪に手を差し込み自分の胸へと頭を引き寄せる。
2人で見上げる空には、赤く燃え上がる流星群。
手は尽くした。
しかし、人類の英知など広い宇宙(ソラ)の脅威から見れば、蚊にさされた程度以下の力しかない。
人類が生き残る為の選択と言えば、もはやこの星からの脱出しか無い。限られた人数分の椅子を奪い合い船に乗り込んだ者達は、皆未だ見ぬ星へと移り住めるのだろうか?
「大佐…アンタは船に乗ってソラへ行けよ。アンタは『資格保有者』だろう?」
「そう言う君こそ『資格保有者』ではないのか?」
宇宙連合とこの星を統括していた政府は、人類全ての中からこれから人間が生き残る為に必要な知識と体力を兼ね備えた『優勢遺伝子』を持つものをリストアップし、その者を優先的に船へと乗せた。
しかし、エドワードは辞退し、今これから焼き尽くさんばかりの高熱に曝されるこの星に留まる事を決めたのだ。
「アンタは…、連合軍の大佐でもあるんだ。ちゃんと船に乗って仕事しろよ…」
「君のいないソラへ出て何の価値がある?」
擦り寄る様に頭を寄せたエドワードは、ゆっくり瞼を閉じる。
「生きろよ…俺の分まで」
「生きるよ…君の傍でこの空が落ちるその日まで」
脱稿(2006/05/31)
「兄さん、これ見て。」
とある村で昼食を取っていたエドワードの向かいには、先程新聞売りの少年から購入したそれを読んでいるアルフォンスがいる。
熱心に記事を追っていたアルフォンスが、何か楽しげにその記事をエドワードの前へと差し出した。
「大佐だよ!凄いねー!!『事件早期解決!!』だって。」
「んー?」
フォークの動きを止め、口に物を含んだままエドワードは新聞を手に取る。
そこには遠巻きながらも東方司令部メンバーの姿を捉えた写真が付随されていた。
小さな人物描写ではあるが、久し振りに見るその男の顔は、何時ものにやけた顔とは違い鋭い眼差しの若き司令官が写されている。エドワードは何も言わず暫らくその写真を見詰め、肩を竦めると手荒にアルフォンスへとその新聞をつき返した。
「相変わらずど派手な事で、これで『焔の錬金術師殿』のFanも大勢増えるだろーな。」
「兄さん……素直じゃないんだから。」
「あ~ん?何か言ったか、弟??」
「……何にも言っていないよ。」
不機嫌に眉を潜め、再び食事へと意識を向けるエドワードに、アルフォンスは小さく肩を落とした。
兄、エドワードは、大佐との関係をアルフォンスに隠している様だった。しかし、聡いアルフォンスに取ってはエドワードの判りやすい行動はそれを確信させるもので、今更隠す素振りをされてもと内心考えている。
だからと言って、「わーい!大佐!!」なんてキャラが違う事をされてもどう反応すれば良いのか判らない。ただ、素直に大佐の顔を見て心を落ち着かせてくれればと願ってしまうのだ。
「兄さん、今度何時イーストに入るの?僕、皆に会いたいなぁ。」
「ん?」
「写真見たら皆と会いたくなっちゃった。」
――― 兄さんも大佐に会いたいでしょ?
この言葉はアルフォンスの心の中に封じられる。
そんな事を口に出したら、意固地なまでの態度で決してイーストに近寄らないだろう兄を思っての行動。
無邪気なまでのアルフォンスの言葉をエドワードはどう捕らえたのか、咀嚼が終わるとアルフォンスに優しい眼差しを向け
「手掛かりも尽きたしな……一度報告書出しに行くか。」
と笑ってアルフォンスに言った。
写真よりも―――――― その温かさに触れたいから。