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 ベットに横になり何気ない話しをしていたが、肌を寄せ合う温もりに何時しかエドワードはウツラウツラと瞼が落ち始める。
 何とか堪え様と努力するエドワードにロイは忍び笑いをしその表情を堪能していると、眠さを堪えた声でエドワードが質問をして来た。

「なぁ…。大佐ってさー、ピアノは弾くけど歌は歌わないのか?」
「必要以上に歌った事は無いな。」
「必要以上って?」
「『アメストリス国軍歌』とかだよ。」
「ふぅん。なぁ…何か歌ってよ。」
「はぁ?……遠慮するよ。」
「何でだよ?」
「歌は苦手でね……。」
「……そっかぁ。俺、大佐の…声……スッゲー………好き…………寝る前……母さん……」

 半分眠っている意識で話しを続けるエドワード。
 『母さん』の言葉に、ロイはエドワードが幼かった頃の『子守唄』の話しでもしたいのだろうと思った。しかし、子守唄など知らない為歌ってやる事は出来ない。

 ロイは、つい最近ラジオで聞いた曲を思い出した。フルコーラスを覚えてはいないが、何故かホンノ何小節かは覚えている。まるで自分達の心を代弁したような歌詞が、強烈なインパクトを残したのだ。

 擦り寄る様に身動ぎをし眠りに付こうとするエドワードに囁くような歌声が届く。
 優しいテノールの歌声に安心感を覚え、エドワードは何時しか深い眠りへと落ちて行った。

 ――― 自分を強く見せたり
     自分を巧く見せたり
     どうして僕らはこんなに
     苦しい生き方を選ぶの?

     答えなど何処にも無い
     誰も教えてくれない
     でも君を想うとこの胸は
     何かを叫んでいるそれだけは真実

 


 

web拍手『a radio program』の続編
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 小賢しい年寄りのお小言を聞きに中央まで来たロイは、親友ヒューズと馴染みのビストロで夕食を取っていた。ビストロといっても言ってしまえば『居酒屋』。気取らず酒を飲みながらの夕食だ。

 

「おい!この頃『豆』と会っているのか?」 

「……イキナリだなぁ。」 



 渋い顔で持って居たグラスの酒を煽って飲み干す。 



「エドは…今、何処に居るかすら解からないよ。」 



 先程まで食べて居た殻の皿を見詰め静かに呟く。 



「相変わらずヘビーな関係が続いているよなぁ。」 

「それでも定期的に顔を出すようになっただけマシと言う物だ。」 



 空いたグラスと引き換えに琥珀色の酒が並々と入ったグラスがテーブルに置かれる。 



「今、話題のラジオ番組を知っているか?」 

「なんの事だ?」 

「中央放送局で収録した番組を全国の放送局で放送しているんだが、まぁ~早い話し『恋愛メッセージ番組+音楽番組』だな。」 

「それがどうしたと?」 

「お前さんが『豆』宛にメッセージを送れば、どこかで『豆』が聴くんじゃないか?」 



 眉を潜めしばし呆れ顔のロイは、言葉無くヒューズを見詰めた。 



「モノは試しだ!そのラジオ番組を聴いてみないか?」 

「………。」 

「マスター!ラジオ無いか?今の時間例の『アレ』放送しているだろう!」 



 勝手に盛り上がるヒューズを横目に、ロイはグラスの酒を急ピッチに煽る。 



 ―――下手をすれば野宿生活の兄弟が、悠長に『恋愛メッセージ番組』を聴いているとは思えない。 



 そんな暇が有れば、文献の1つも読み漁るだろうとロイは思った。 

 



 店内には、先程ヒューズが話して居たラジオ番組が流れ始めた。 

 

『―――続いてのメッセージは、ラジオネーム『鋼』さんから……』 



 席に戻って来たヒューズとグラスを口に付けたままのロイはお互いの顔を見合わせた。 



『メッセージを送りたい人は『焔』って書いてあるね!メッセージは『必ず戻る。』とだけしか書いていないね。で、リクエスト曲は……』





「『豆』も俺と同じ事を考えたみたいだな。……おい。顔が赤いぞ!?」

「……酔っているだけだ!」 

「普段酒が顔に出ないお前がか?」 

「うるさい!!」 



 にやつくヒューズを無視し、リクエストされた曲に耳を傾ける。 

 

 

 ―――答えなど何処にも無い 

    誰も教えてくれない 

    でも君を想うとこの胸は 

    何かを叫んでいる。それは真実。 

 

 

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もし……その行為で良いのなら、俺は嫌じゃないかもしれない。

 資料室で大佐が俺にKissをして来た。
 文献を読み耽っていて存在に気付かなかった俺は、驚きの余り息をするのも忘れ苦しくなるその行為を止めて欲しくて、大佐の背中を何回も叩いた。
だけど、そんな事では離してくれず、角度を変えるため離れる瞬間に息を継いでまたその行為に翻弄される。
軍服に縋り付くようにしていなければ、その場に沈み込みそうだ。それでも身体は何時しか強張っていた力が抜け、漂う感覚を味わっていた。

 やっと離れた大佐の顔を残った気力で見上げれば、クスリと意地の悪い笑みを浮かべている。悔しくて顔を赤くすれば、更に上機嫌な笑みを大佐は浮かべた。

「いきなり何何だよ!」
「何ね、折角君が来たのに私ではなく文献に意識を取られてしまって悔しいから、ついね。」
「はぁ?文献に妬くか?」
「妬くよ。」

真剣な眼差しはオチャラケを許さない雰囲気で、俺はそれでも言葉を選び大佐に話し掛けた。

「アンタが言ったんじゃないか、『離れていても心は共に在る。』って。だから………解かれよ。」
「嬉しい事を言ってくれるね。」

そう言いながらもう一度顔を寄せる大佐。

「だから……邪魔するな。」
「だから、会った時は身も共に在りたいな、エドワード。」
「アンタ我が侭だ。」
「今更だな。」

 受け入れたKissは何処か優しくて、こそばゆくて、それでも俺は心に温かなモノを感じた。

軽いKissにも、深いKissにも何時もそれがあって、俺は少し……ほんの少しこの時が好きかもしれない。


 心も身体も共に居られる事がどんなに幸せかこの時しか解からないから、この短い時間で有りっ丈の気持ちを込めそのKissに返した。


――― 俺もアンタと共に居るよ。

   何処に居ても……
   何をしていても……


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「ゴメン……俺が悪かった。」
「素直で宜しい。」
「でも!アンタだって悪いんだ謝れよ!!」


 些細な事から喧嘩になり、俺はこの街を出る為宿に戻り荷物を纏めた。纏めると言ってそんなに荷物が在る訳じゃないからチェックアウトすれば終わる話だ。
アルは、「何処に行くの?今から汽車に乗ってどうするの?」ととがめて来たが、聞く耳なんて持っていない。一刻も早くこの街から……アイツから離れたかった。

 宿を出て驚いた。エントランスに横付けされた軍用車両。乗っていたのは予想通り大佐と中尉。俺はそれを無視して駅へと歩き始めた。
俺の横を平走するように動く車。アルが俺に声を掛けて来たがそれすらも無視をした。
窓を開け俺に声を掛けて来た大佐。

「上官命令だ。直ぐに私の部屋に来なさい。」

そのまま車を発進させ俺達の前から消えた。


「何のご用ですか?クソ大佐!」
「言葉遣いがなっていない様だね、鋼の?」

遠慮無く力任せに開けた扉が大きな音を立て壁にあたった反動で勝手に閉じる。アルは中尉に呼び止められ司令室に居る。どうせ大佐の差し金だろう。

「汽車の時間が迫っているんだ。話しは完結にお願いしたいものですね。」

何時もの席でふんぞり返って座っている大佐を睨め付ければ、口角を上げただけの笑いで俺に言う。

「詫びの言葉を貰いたいな。エドワード。」
「!」
「どうした?」
「俺が悪ぅーございましたっ!」
「クックック……気持ちが篭っていないな。私は大いに傷付いたのだよ。」
「ゴメン……俺が悪かった。」
「素直で宜しい。」
「でも!アンタだって悪いんだ謝れよ!!」
「ならば、これで許してもらおう。」

席を立った大佐は、俺に近付き腰を屈め顔を近付けてくる。
逃げる様に後退すれば、腰を引き寄せられその行動も阻止された。

「仲直りのKissだ。」

結局大佐の思い通りになっている事が悔しくて溜め息を付いた後、俺は観念して目を閉じた。



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その言葉って……苦手だ。


『好き』とか『愛している』とか平気で言って来る男がいる。そう言う気障な事を言わせれば世界一!右に出る者は居ない事は確かだと思う。
俺は、そう言う事に関して左のずーと隅で選外だろう。

 本心は……そりゃー嫌いじゃないから。でも、言えるかって言われれば……言えない。

大佐は素面で言えるから凄いと感心する。そんなタラシな事を感心する俺もどーかしているけど、事実、俺は大佐に言った事が無いんだ。俺は会う度に言われてウンザリしているけれど。

『愛しているよ、鋼の。』
『好きだよ、エドワード。』

何回聞かされただろうその言葉。それでも俺の言葉を急かさずに待ってくれている大佐には申し訳無いと思う。やっぱり……言葉って必要なんだと思う。


 久し振りに報告をしに訪れたら、執務室で大佐は気持ち良さそうにソファーの上で仮眠中だった。疲れているんだと一目で解かるその寝顔を見ながら小さなため息を落とした。

――― 起こしたら悪いな。出直すか。

その時、フト悪戯心が動いた。大佐が起きているかもしれないから確認の為、大佐の横に座り耳元で囁いた。

「大佐ー?……無能さん?……スケベさん?エロイ=マスタング?………本当に寝てますか?襲うぞー?良いのかー?…………七三に髪分けるぞー?」
「………………」

どうやら狸じゃないらしい。
疲れて寝ている大佐の顔を除き込み、以外にも寝顔が子供で笑えて……何だか嬉しくなった。

 息を殺しさらに大佐の顔へ近付く。そして、頬にそっと唇を触れさせた。
 慌てて身体を起こし、気配を消したままゆっくり執務室を出た俺。本当は耳元で『好き』ぐらい言うつもりだったけど羞恥心から玉砕した。Kissが恥ずかしくないかと言われれば……激恥ずかしい!

 今日はまともに顔を見る事が出来そうに無くて、司令室に居る筈のアルに声を掛け宿に戻る事にした。



言葉よりも………行動で示した方が楽かもしれない。



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