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Imaginary Heaven様 (現在LINK先様閉鎖?)
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「ゴメン……俺が悪かった。」
「素直で宜しい。」
「でも!アンタだって悪いんだ謝れよ!!」


 些細な事から喧嘩になり、俺はこの街を出る為宿に戻り荷物を纏めた。纏めると言ってそんなに荷物が在る訳じゃないからチェックアウトすれば終わる話だ。
アルは、「何処に行くの?今から汽車に乗ってどうするの?」ととがめて来たが、聞く耳なんて持っていない。一刻も早くこの街から……アイツから離れたかった。

 宿を出て驚いた。エントランスに横付けされた軍用車両。乗っていたのは予想通り大佐と中尉。俺はそれを無視して駅へと歩き始めた。
俺の横を平走するように動く車。アルが俺に声を掛けて来たがそれすらも無視をした。
窓を開け俺に声を掛けて来た大佐。

「上官命令だ。直ぐに私の部屋に来なさい。」

そのまま車を発進させ俺達の前から消えた。


「何のご用ですか?クソ大佐!」
「言葉遣いがなっていない様だね、鋼の?」

遠慮無く力任せに開けた扉が大きな音を立て壁にあたった反動で勝手に閉じる。アルは中尉に呼び止められ司令室に居る。どうせ大佐の差し金だろう。

「汽車の時間が迫っているんだ。話しは完結にお願いしたいものですね。」

何時もの席でふんぞり返って座っている大佐を睨め付ければ、口角を上げただけの笑いで俺に言う。

「詫びの言葉を貰いたいな。エドワード。」
「!」
「どうした?」
「俺が悪ぅーございましたっ!」
「クックック……気持ちが篭っていないな。私は大いに傷付いたのだよ。」
「ゴメン……俺が悪かった。」
「素直で宜しい。」
「でも!アンタだって悪いんだ謝れよ!!」
「ならば、これで許してもらおう。」

席を立った大佐は、俺に近付き腰を屈め顔を近付けてくる。
逃げる様に後退すれば、腰を引き寄せられその行動も阻止された。

「仲直りのKissだ。」

結局大佐の思い通りになっている事が悔しくて溜め息を付いた後、俺は観念して目を閉じた。



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その言葉って……苦手だ。


『好き』とか『愛している』とか平気で言って来る男がいる。そう言う気障な事を言わせれば世界一!右に出る者は居ない事は確かだと思う。
俺は、そう言う事に関して左のずーと隅で選外だろう。

 本心は……そりゃー嫌いじゃないから。でも、言えるかって言われれば……言えない。

大佐は素面で言えるから凄いと感心する。そんなタラシな事を感心する俺もどーかしているけど、事実、俺は大佐に言った事が無いんだ。俺は会う度に言われてウンザリしているけれど。

『愛しているよ、鋼の。』
『好きだよ、エドワード。』

何回聞かされただろうその言葉。それでも俺の言葉を急かさずに待ってくれている大佐には申し訳無いと思う。やっぱり……言葉って必要なんだと思う。


 久し振りに報告をしに訪れたら、執務室で大佐は気持ち良さそうにソファーの上で仮眠中だった。疲れているんだと一目で解かるその寝顔を見ながら小さなため息を落とした。

――― 起こしたら悪いな。出直すか。

その時、フト悪戯心が動いた。大佐が起きているかもしれないから確認の為、大佐の横に座り耳元で囁いた。

「大佐ー?……無能さん?……スケベさん?エロイ=マスタング?………本当に寝てますか?襲うぞー?良いのかー?…………七三に髪分けるぞー?」
「………………」

どうやら狸じゃないらしい。
疲れて寝ている大佐の顔を除き込み、以外にも寝顔が子供で笑えて……何だか嬉しくなった。

 息を殺しさらに大佐の顔へ近付く。そして、頬にそっと唇を触れさせた。
 慌てて身体を起こし、気配を消したままゆっくり執務室を出た俺。本当は耳元で『好き』ぐらい言うつもりだったけど羞恥心から玉砕した。Kissが恥ずかしくないかと言われれば……激恥ずかしい!

 今日はまともに顔を見る事が出来そうに無くて、司令室に居る筈のアルに声を掛け宿に戻る事にした。



言葉よりも………行動で示した方が楽かもしれない。



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 隣りに立つアイツは俺なんかよりずっと背が高い………

正直……認めたくは無いけど。

街中を大佐と歩くのは久し振りだった。
勿論俺の後ろからは、中尉とアルが一緒に歩いて来る訳で、二人きりと言う事じゃない。その方が俺も気楽だし話しもしやすい。今だに俺は大佐と二人きりになるのが苦手だった。

 中尉の提案で昼食を一緒に取る事になった。入り慣れない高級なその店は、何処か落ち付かなくて俺はお腹が空いているにも拘らず、その場に腰が落ち付かなかった。案内された席に座り大佐がチョイスした食事を啄ばむ。目の前の大佐とその横に座る中尉。俺の隣りにはアルと変わらないメンバーなのに何処か緊張して食事の味なんて解からなかった。

 見慣れない料理を眺めながらそれでも口に運んでいれば、何と無く大佐が気になった。食器から視線を上げれば、軽食を食べ終わった大佐は珈琲を飲んでいた。
何気に見ただけなのに……その珈琲を飲む口元から視線が外せなくなった。

 考えてみれば俺から大佐にKissした事は無かった。俺からするのも恥ずかしいし…変だ!大体、そう考える前にアイツが勝手に俺の隙をついて遣りたい放題好き勝手にしている。こっちからなんて考える暇すらない。
そして、何よりここが重要!

俺と大佐が立っていれば、少しくらい背伸びをしても駄目なんだ。………届かないんだ。アイツに。

だからしない!俺からは絶対しない!!
俺の背がグーんと伸びて大佐を抜かしてマッチョになって……そしたら考えてやってもイイ。



「――― の?鋼の?どうした、何か有ったのか?」
「へ?」

間の抜けた返事を返した俺を大佐もそうだけどアルも中尉も不思議そうに眺めている。
まさか「大佐の……アレに目を奪われていて……な事考えてました。」なんて絶対言えない!
考えてもみれば、皆の前で疚しい想像して俺って壊れてしまったのかも知れ無い。
勝手に顔が熱くなる。そんな俺を皆はどう見ているのかまた考えてしまい、自分では止められない程顔が熱く感じた。

「俺チョット席外す!ゴメン!!」

俺は席を立ちトイレへと駆け込んだ。
鏡の前で自分の顔を見れば見た事も無い程の赤い顔が……!

「俺ってすっげーはすかしい奴!」

まるで欲求不満の様に大佐の事とを見詰めていた俺自身に自己嫌悪した時だった。

 

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 初めてのKissは………

 東の島国から『友好の印』と送られて来たサクラと言う名の木は、ピンクの小さな花弁が整然と咲き圧倒的に綺麗だった。
その下で立つ蒼の軍服と黒髪は、俺の目から見ても綺麗とかカッコイイとかそんな感情を抱いてしまう。だから流された………。

 幻想的なその風景に目を奪われ、その言葉に耳を奪われ、その存在に魂を奪われた。

返事をする前に近付いて来るそいつの顔は、闇の瞳で俺を捉え思考までも奪って行った。目線を逸らさずその瞳を見詰めれば、唇が触れ合う瞬間にフワリと笑い俺にこう言った。

「Kissする時は目を閉じるものだよ。鋼の。」

その言葉に思考を取り戻し、弾かれたように身体を大佐から離した。だけど、背中に回った大佐の腕に阻まれ身体を離すことが出来ない。せめてとばかり顔を背け俯き舞い降りた花弁の絨毯を視界に入れた。

「……いきなり過ぎてる大佐が悪い。」
「それは失礼。」
「手が早いんだよ、俺の返事はどうした。返事も聞かず重要な事するんじゃねーよ!」
「『重要』ね。フム……鋼のはKissするのは初めてなのか?」
「はぁ?乙女ぶってる事聞くな!そんな事どーでも良いだろう!!」

腕で大佐の身体を突っぱねその場から離れ様としたけど、逆にその身体を強く抱かれ耳元で囁かれた。

「私が初めての人なら大変嬉しいじゃないか。」
「――― !!!」

顔に血が集まる程の恥ずかしさだった。
ジタバタとその腕の中で暴れてはみたが、体格差でその行動は呆気なく阻止されて逆に俺の瞳を捉える為片方の手で顎を固定された。

「どうなんだい、私が初めてかな?」
「悪徳業者みたいな顔してにやけるなっ!」
「では、その件は後ほどゆっくり聞くとしよう。」

顎を固定していた大佐の手は、するりと俺の後頭部に移動してその動きを止めた。

「さあ、瞼を閉じて。Kissしよう。」
「まだアンタに返事してねーじゃん!」
「聞くまでも無いよ。」
「自信満々……自惚れが強すぎんじゃねーの?」
「誉めてくれているのかな?さあ黙って。」

また近付いて来る黒の瞳を何時までも見て居たくて……羞恥心で逸らしたくて……。
俺は、触れる瞬間瞳を閉じた。



毎年催される盛大な先代の墓参り。


幼い頃亡くした両親の跡を継ぎ、世界経済の6%を占める経営力を持った【ロロノア・グループ】総裁の座に収まり早5年以上の月日が流れる。

死んだ者へと送られた仰々しい程のクロスの墓に部下が用意した花束を置く。

忙しくその顔すらも写真を見て思い出す両親にゾロは祈りを捧げ、その後式は恙無く進み後は集まってくれた多くの関係者へ挨拶を残すのみとなっていた。

 

墓を背に皆へと顔を向ける。
自分を品定めする視線をものともせず、普段は無口なその唇を開いた。

「本日はお忙しい中、先代の周忌にお集まり頂き感謝の念が尽きません。さて---」

 

その時微かにだが聞こえた……

 








 

参列者もその音を耳にしたのか、一瞬ざわめくと直ぐに静まりその音に耳を貸す。






ヴァイオリン?

 

 

 

音の方向に視線を向ければ、丘の斜面に在る墓へ向かい痩身の男がそれを奏でている。

【ショパン 練習曲作品10の第3番 ホ長調】

 

「別れの曲」と言われる耳馴染みのその曲を、ヴァイオリンの切ない音色が墓地の空気を染上げる。



新緑を撫でる優しい風

揺れる金の髪


……ゾロの心が俄かに騒ぎ出した。

 



脱稿(2006/05/31)

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